修学旅行先に海外を選ぶ中学・高校が増えています。異文化に触れて、視野を広げることは素晴らしいことですね。
海外への修学旅行を計画している先生方には是非知っておいていただきたいことがあります。
海外では文化だけでなく医療事情も大きく異なります。
もし生徒さんが体調不良やケガ等で病院にかかると、日本国内であれば健康保険があるので治療費負担は3割で済みますが、海外では健康保険が効かないため治療費は全て自己負担になります。
国によっては医療費が高額なだけでなく(盲腸手術で200万円など)、救急車が有料であったり、医療費の支払能力が証明できないと治療すら受けられません。
しかし、医療費に備えて多額の現金を生徒に持たせることは現実的ではありません。
そこで海外旅行保険に加入することが大切となるのです。
もし「修学旅行は教職員が引率するので安心だから、保険に入らなくても大丈夫じゃないか?」「修学旅行は短期間だから、元気で若い生徒は体調を崩すことは無いのでは?」と思っている先生がいらっしゃったらとても危険です。
修学旅行中に思いがけないことで事故に遭ったり医療機関にかかる事例は実際にも多く起きています。
3泊4日のベトナムへの修学旅行中、旅行3日目と4日目に5人の生徒が腹痛や下痢、吐き気を訴え、4人が医療機関で手当てを受けた。
さらに飛行機の搭乗前や搭乗後に新たに5人が症状を訴え、帰国後も含めると約50人が症状を訴えた。いずれも集団食中毒の疑いとみられている。
私立中学校の生徒が修学旅行先のアメリカで、ホームステイ先のホストファミリーとハイキング中に滑落事故で死亡。
※この事故はホームステイ先で起きた事故であり「学校管理下にあるとはいえない」という理由から、日本スポーツ振興センターは災害共済給付制度に基づく死亡見舞金を不支給とする判断をしています。
修学旅行等の学年単位以上の学校旅行を対象とする「学校旅行総合保険」というものがあります。この保険は海外旅行向けのプランもあり、「契約者=学校」「加入者=参加者全員」が条件です。
つまり、加入者である生徒は全員同じプランに加入することとなります。
この保険は、旅行参加者の医療費等を補償するだけでなく、旅行先で万が一のことがあった時の学校側の緊急対応にかかる費用等も補償対象となります。
加入する保険会社によっては医療費のキャッシュレスサービスにも対応しているため、医療機関にかかった時も安心です。
参加者全員が同じ保険に加入しているので、キャッシュレスサービス利用のための連絡先も同じなのでスムーズに手続きもできる点が大きなメリットです。
ただこの学校旅行総合保険は、医療補償が300万~500万円ほどと最低限しかないため、手術や入院等が必要になった場合は保険だけでは不足するという大きな欠点があります。
また、通常の海外旅行保険と比べると補償内容の種類が乏しいというデメリットもあります。
学校旅行総合保険には医療費補償の他に賠償責任に備える補償や救援者費用補償がありますが、持病や携行品(持ち物)に関する補償がありません。
不足している補償については、個々で海外旅行保険に加入して備える必要があります。
このように、学校旅行総合保険には「修学旅行参加者に無保険者が誰もいなくなり、最低限の医療補償が得られる」というメリットはあるものの、それだけに頼って生徒を海外渡航させるのはとても危険だということが分かります。
上記で述べた通り、学校旅行総合保険では足りない補償があります。
持ち物に関する補償や飛行機の遅延・飛行機に預けた手荷物の遅延により負担した費用については補償されません。
最近は中高生のほとんどがスマホを持っているようですが、海外ではスマホやパスポートを狙った盗難も多く発生しているので、持ち物の補償は必要だと思います。
また、学校旅行総合保険では出国前に発症している病気(既往症)の悪化は補償対象外となります。
慣れない海外で既往症が悪化する可能性もありますので、既往症がある参加者には既往症も補償してくれる海外旅行保険を案内すると良いでしょう。
【参考ページ】
持病補償のある海外旅行保険を販売しているAIG損保
今は学校の責任が問われやすい世の中ですから、もし海外旅行保険への加入案内がなかった場合には事故や状況によっては「海外旅行保険について必要な情報提供を行わなかった」として学校側がその責任を追及される可能性は十分あると考えています。
このように、学校側が「学校旅行総合保険」に加入するのと同時に、生徒には個別に海外旅行保険に入っておくよう生徒保護者の方に通知しておくことが大切です。
ただ漠然と「保険に入りましょう」と案内しても、どうすれば良いか戸惑う保護者もいるかもしれません。
なぜ海外旅行保険の加入が大切なのか、加入しなかったらどういう事態が起こりえるのか、海外の治療費がどれだけ高額か、治療費が支払えないと治療をしてもらえないなど、日本とは違う海外の医療事情について説明すると良いでしょう。
またもし可能であれば、海外旅行保険に加入した生徒については学校側もその保険会社や緊急連絡先を把握しておくと万が一の際にも手続きがスムーズになるでしょう。
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