全国各地で進む自転車保険への加入義務化

近年、自動車による交通事故のみならず、自転車による交通事故が後を絶ちません。
昨年の2020年に自転車乗用中に起こった交通事故は全国で6万7673件となり交通事故件数全体に占める割合は17.8%と交通事故の約2割が自転車による事故となっています。

自転車というと通常の自転車、通称『ママチャリ』を想像するかと思いますが、最近では電動アシストを搭載した自転車や、サイクリングやデリバリーサービス(Uber eatsなど)でも利用されるロードバイクなど、よりスピードが出やすくなった自転車も増えており、自転車による交通事故件数に拍車をかけています。

実際に自転車による事故により高額な賠償金を請求されるケースも発生しており、中には数千万円もの賠償金を請求されるケースも起きています。

これまで自転車保険自体は存在していましたが、自転車による交通事故が増加傾向にあることを踏まえて、全国各地で自転車保険への加入を義務化、もしくは努力義務とする取り組みが開始されました。

まず2015年に初めて、兵庫県が自転車保険への加入を義務化としました。
これを皮切りに全国各地で自転車保険への加入を義務化する自治体が増えていき、最近では10月1日に熊本県と三重県で自転車保険への加入が義務化されました。

また、千葉県では県自体の自転車保険への加入は努力義務とされていますが、千葉市のみ市独自でも自転車保険への加入を義務化としました。
現在では35の県または自治体で自転車保険への加入を義務化、もしくは努力義務としています。

なぜ自転車保険の加入が必要なのか

先ほども少し触れましたが、自転車による交通事故で高額な賠償金を請求されるケースが増えています。

自転車保険に加入していなかった場合、自転車運転中に歩行者と衝突をし重症を負わせてしまうと、高額な賠償金を支払わなければいけません。
いきなり何千万円もの賠償責任を負って、すぐにそれを支払える資金を持ち合わせている方は少ないでしょう。

被害者にとっても加害者にとっても安心して自転車を運転できるように、万が一の事故に備えて自転車保険への加入は今の時代必須であると言えます。
これは加害者の経済的負担を軽減するだけでなく、被害者を救済するという観点からもとても重要です。

高額な賠償費用事故の事例

自転車事故での損害賠償では最高額の9521万円

2008年9月、神戸市で当時小学五年生だった少年が運転する自転車が、62歳の女性と正面衝突する事故が発生しました。

衝突の衝撃で女性は頭部を地面に強打し、脳挫傷を負い重症。幸い命に別状はありませんでしたが、意識障害に加え四肢拘縮などの後遺症が残り日常生活に支障をきたす重大な事故となりました。
被害者側が裁判を起こし、少年の母親に9521万円の賠償責任命令が下りました。

男子高校生に対して9266万円の損害賠償請求

2008年6月、東京都で当時男子高校生だった少年が、歩道かエア飛び出し車道を斜めに通過した際に、対向車線から走ってきた自転車を運転する男性会社員と衝突する事故が発生しました。

被害を受けた男性会社員は言語機能の喪失などの後遺症を患い、事故を起こした男子高校生に対して9266万円の賠償責任命令が下りました。

無灯火、『ながら運転』が引き起こした重大事故

2010年12月、横浜市で当時女子高生だった少女が夜間にスマホを操作しながらの、『ながら運転』を行い、前方を歩いてた看護師の女性に気づかずに衝突する事故が発生しました。

ながら運転に加え無灯火で走行しており、衝突の衝撃で転倒してしまった看護師の女性は歩行困難などの後遺症を患い、看護師として勤めていた会社も辞職せざるを得なくなってしまいました。
事故を起こした女子高生に対して約5000万円もの賠償責任命令が下りました。