長崎県佐世保市で自転車同士の衝突事故、60歳男性が死亡

11月26日早朝、長崎県佐世保市有福町で60歳の男性が運転する自転車と、男子高校生が運転する自転車同士が衝突する事故が発生しました。
事故の衝撃で60歳の男性は強く頭を打ち、病院に運ばれましたが脳挫傷のため27日午後10時過ぎに死亡が確認されました。

自転車を運転していた双方はスポーツタイプの自転車を運転しており、いずれもヘルメットは装着していなかったということです。

事故現場は、片側一車線の緩やかなカーブを過ぎた直線道路の坂道で起こりました。
11月末の早朝ということで辺りはまだ暗く見通しも悪く坂道であったことから通常時よりスピードが出ていた可能性もあります。

自転車同士の事故での過失割合とそのリスク

自転車と歩行者、自動車と自転車ではなく、今回の事故は自転車同士の事故ということです。

出会い頭による自転車同士の事故の場合、過失割合は基本的に5:5となります。
自転車は軽車両として扱われるため、事故の際にどちらかが交通ルールに違反していた際には(無灯火運転、傘やイヤホン、携帯電話の利用など)、過失割合は変動します。
また、事故の際に相手側が子供や高齢者だった時には、自分側の過失割合が高くなることもあります。

今回の事故は自転車同士による事故であり、なおかつ60歳の男性は死亡してしまいました。
もし両者に交通ルールの違反が無く、基本的な過失割合の考え方でいくと過失割合は5:5となり、過失相殺となってしまう可能性もあります。

双方が自転車保険に加入していなかった場合、お互いに賠償金を自己負担しなければいけなくなってしまうので、事故による身体的負担に加えて経済的負担も背負うことになってしまします。
男子高校生とその家族の支払い能力によっては、亡くなられた60歳男性やその家族への賠償金が十分に支払われない可能性もあります。

自転車と歩行者の事故なら自転車側が、自転車と自動車の事故なら自動車側が過失割合としては高くなることが多いですが、自転車同士の事故の場合、このようなリスクがあることを理解しておく必要があります。

こうならないためにも今の時代では、自転車を運転するすべての人は自転車保険への加入は必須と言えるでしょう。

自転車事故による死亡者の6割は頭部外傷が起因

全国の自転車事故件数は、平成21年に15,6488件をピークに、平成31年には80,473件と10年で約半分ほどまで減少しています。
また、全国の自転車事故による死亡件数は平成20年に727件をピークに減少傾向にあり、平成31年では433件となっています。

詳細:自転車事故件数及び死亡件数推移 国土交通省調べ

この433件という数字が多いか少ないか感じ方はそれぞれですが、1日に1件以上は自転車事故により亡くなられている方がいるというと、とても他人事のようには思えません。
また、平成31年では80,473件の自転車事故に対して、死亡事故件数は433件と死亡率は5.4%ほどになります。これは20件の自転車事故のうち1件は死亡してしまう方がいるということです。

またその中でも自転車事故により亡くなられた方の6割は頭部外傷によるものです。

見栄えを取るか命を取るか

最近では自転車保険への加入を義務化もしくは努力義務化とする自治体が増えて来ました。
また自転車保険の義務化に加えて、自転車に乗る際にヘルメットの着用を義務化もしくは努力義務とする自治体も中には出てきています。

群馬県では今年の4月に自転車に乗る際のヘルメット着用を努力義務化としました。
そこで、群馬県庁に自転車で通勤してくる従業員365名を対象に、朝の通勤時にヘルメットを着用している従業員の割合を調査することになりました。
結果は365名中、ヘルメットを着用していたのは31名と1割にも満たない結果となりました。

群馬県庁の職員にヘルメットを着用しない理由を調査したところ
『ヘアスタイルが崩れてまう』
『根本的にヘルメットを被ることに抵抗がある』
『防寒対策としてフードなどを被るため』

など様々な意見がありました。

ただ、もし自身が自転車運転時に事故に遭い、頭部を地面に強く打ち付けたことで重傷を負ってしまったり後遺症が残ってしまった場合、ほとんどの方がヘルメットを被っておけばよかったと思うことになるでしょう。

とはいうものの、ヘルメットを被ることへのハードルはまだまだ高いのも事実です。
そこで、少し考え方を変えることでヘルメット着用の壁は壊すことができるのではないかと考えています。

ヘルメット着用へのハードルを下げるには?

例として上記の
『ヘアスタイルが崩れてまう』
『根本的にヘルメットを被ることに抵抗がある』
『防寒対策としてフードなどを被るため』

を例とすると

『ヘアスタイルが崩れてしまう』→ 通勤の場合いつもの出勤時より10分早く出勤し、勤務先でヘアスタイルを整える

『根本的にヘルメットを被ることに抵抗がある』→ 一見普通の帽子のように見えるヘルメットがあれば抵抗感も少しは和らぐのではないか

『防寒対策としてフードなどを被るため』→ ヘルメットとしての安全性は保ちつつ、ヘルメットの内側が裏起毛になっていて耳当てが付属されているヘルメットがあれば防寒対策にもなるのではないか

といったように、自身で工夫したり様々なニーズに対応したヘルメットが登場することで、ヘルメット普及への手助けになると考えます。
時代が変化していくように、我々自身も少しずつ変化していかなければなりません。

今回の事件も、頭部を強く打ち付けたことにより脳挫傷を引き起こし死亡してしまいました。
もし、ヘルメットを着用していたからといって事故を未然に防ぐことはできなかったかもしれませんが、最悪の事態は免れたのでは無いでしょうか。