東京都足立区、歩行中男性が自転車との衝突により車道に倒れ、走って来たトラックにはねられ死亡

2021年12月2日午前5時過ぎ、東京都足立区西新井の環状7号線にて、歩道を歩いていた近所に住む興梠高喜さん75歳の男性と、正面から走ってきた自転車を運転する男子高校生が衝突しました。

その際に、75歳の男性は自転車と衝突したはずみで車道に倒れ、対向から走ってきたトラックにはねられ死亡する事故が発生しました。

事故当時、男子高校生は通学途中で両耳にイヤホンを装着していたとのことです。
また、早朝であったことから辺りはまだ暗く見通しが悪い中、男子高校生は無灯火で走行しており『前をあまり見ていなかった』と話しているようです。

現在警察が、トラックを運転していた52歳の男性と自転車を運転していた男子高校生から事故当時の状況についての聞き取りを行い、重過失致死の容疑で調べを進めています。

重過失致死とは?

刑法211条に定められている、必要な注意を怠るなど重大な過失で人を死傷させた犯罪のことです。

また、重大な過失とは「人の死傷の結果がその具体的な状況下において通常人として容易に予見できたのに、これを怠り、あるいは、結果を予見しながら、その回避の措置をとることが同様容易であったのに、これを怠つたというような注意義務の懈怠の著しい場合を指すものと解する」と東京高裁が判示しています。
重過失致死の場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が課されることになります。

今回の事故の場合、男子高校生は自転車を運転していた際に両耳にイヤホンを装着し、なおかつ見通しが悪い中無灯火で走行していたため、外部の音は遮断され前方の視界が悪いことも承知の上で走行していたことになります。

この事から男子高校生は自らの運転が危険行為であることを知りながら、なおかつ事故を偶発してしまうリスクも予想できていたにもかかわらず、走行を続けていた事は重大な過失であると言えます。

過去の高額賠償事例を例に

自転車事故は軽度の怪我で済む事故から、中には死亡事故にまで発展するケースも少なくありません。

実際に、今回の事故のように自転車事故が起因して歩行者を死亡させてしまいました。
また、事故を起こした加害者側に重大な過失があった場合、自転車事故でも高額な賠償命令が下ることもあります。

平成20年6月5日「自転車同士の事故、被害男性には言語喪失などの後遺症」

男子高校生が昼間に、自転車横断帯からかなり手間の歩道から、自転車で車道を斜めに横断した際に対向車線から自転車で走行してきた男性会社員と衝突する事故が発生しました。
衝突された男性会社員は事故の影響で言語機能の喪失などの重大な後遺症が残ってしまいました。
事故を起こした男子高校生には9,266万円の賠償責任命令が降りました。

平成15年9月30日「自転車と歩行者による事故、歩行者女性が死亡」

男性が夕方、自転車をペットボトル片手に下り坂を猛スピードで走行し交差点に差しかかった際に、横断歩道を歩行中だった女性と衝突する事故が発生しました。
女性は病院に運ばれましたが事故の影響で脳挫傷などを患い3日後に死亡が確認されました。
事故を起こした男性には6,779万円の損害賠償命令が降りました。

今回の事故では、男子高校生側に重大な過失(自転車走行時のイヤホン装着、無灯火走行)があり、被害者男性が死亡している事から上記の高額賠償事例と同等かそれ以上の高額な賠償命令が下る可能性も十分に考えられます。

自転車保険への加入と合わせて、健全な自転車走行を

自転車を運転し走行している以上は、このようなリスクが自転車を運転するすべての人にあります。そのため、今の時代では自転車保険に加入することは必須であると言えます。

それと同時に、今一度自転車を運転する際の交通ルールやマナーの再確認と徹底が必要です。

今回の事故についても、男子高校生が健全な自転車走行(イヤホンを着用せずに、自転車のライトを点灯しての走行)をしていれば、歩行中の男性をより早く認識し事故を回避することが出来たかもしれません。
手軽に利便性の高い自転車だからこそ、より一層の注意喚起が必要だと考えます。