全国各地で進む自転車運転中のヘルメット着用義務化の課題

2015年に兵庫県で初めて自転車保険の加入が義務化にされて以降、全国的にも自転車保険への義務化、もしくは努力義務とする自治体が増加しています。

しかしながら自転車事故の総件数は減少傾向にあるものの、今現在でも年間約7000人ほどの方が死亡あるいは重症を負う事故へと発展してます。

自動車や二輪車などと違い、自転車を運転するにあたり免許などはなく、誰でも気軽に乗ることができる乗り物だからこそ、より一層の安全対策が必要不可欠となってきています。

自転車の死亡事故の大半が頭部外傷によるもの

公益財団法人交通事故総合分析センターによると、自転車と自動車の交通事故による死亡事故では、自転車に乗っていた方の頭部外傷のうち、自動車のタイヤ以外の車体、もしく道路に打ち付けることが大半を占めています。

このように硬いボディの車体やコンクリートなどの路面に頭部を強く打ち付けるため死亡事故または重傷を負ってしまうケースが後を立ちません。

このような頭部外傷の交通事故による死亡または重症事故を防ぐには、ヘルメットの着用がとても有効になってきます。
実際にヘルメットを着用することで、頭部外傷による死亡事故は4分の1程までに減少することも分かっています。

2021年4月から群馬県で、同年10月1日から愛知県で自転車乗用中の際にヘルメットの着用が努力義務化となりました。
この努力義務化に伴い、年齢に関わらず自転車に乗るすべての人にヘルメットの着用が求められることとなりました。

ヘルメット着用義務化の背景にあるもの

神戸市に住む小学生が学校の課題として取り組んだ自由研究が話題となりました。
取り組んだ内容としては、ある交差点で朝昼夜のそれぞれ一時間、交差点を横断する歩行者と自転車の信号無視をする割合を調査しました。

調査結果は、約1300人を対象とし、自転車を運転する15%が信号を守らず交差点を通過して行きました。また、歩行者の信号無視は、子供が0人に対して大人は約10%もの人々が信号無視を行なったという調査結果となりました。

交通ルールを呼びかける立場の大人が交通ルールを守らず、子供だけが素直に交通ルールを守っているという状況です。このままでは交通ルールを子供が大人に呼びかける未来が訪れても不思議ではありません。

大人の自転車事故も増えていることなどから、子供に限らず自転車に乗るすべての人にヘルメットの着用義務が課せられているのではないでしょうか。

ヘルメット着用義務への弊害

群馬県では4月からヘルメットの着用が努力義務となりました。
これに伴い群馬県庁では職員を対象に、県庁駐輪場で30分ほど自転車で通勤してくる職員をカウントし、どれほどの職員がヘルメットを着用しているかを調査しました。

すると、県民に呼びかける立場の職員でさえ365人のうちヘルメット着用していたのは31人と1割にも満たない結果となりました。

ヘルメットを着用していない職員に、ヘルメットを着用しない理由を聞くと

・ちょうどいいサイズのものがない
・ヘアスタイルが崩れてしまう
・防寒対策でフードを被るため着用できない

などといった意見が多く聞かれました。

まだまだヘルメット着用への理解度は低く、理想と現実が擦り合わされるには時間がかかりそうな印象です。

ヘルメット着用を普及させるには?

では、ヘルメット着用を促すにはどのような方法を取れば良いのでしょうか?
これには2つの方法があると私は考えています。

『外的な働きかけ』と『内的な働きかけ』

■外的働きかけの例
・スーパーやコンビニエンスストアなどに、自転車を利用して来店する際にヘルメットを着用して来店するとポイントカードへのポイントが5倍になる
・スポーツ施設などに自転車で通う際、ヘルメットを着用していない方は入館することができない。
などといった、外部からの働きかけによりヘルメットの着用を促すという方法です。

この外的働きかけのメリットは、即効性があり短期間でみると効果を発揮しやすいといったメリットがあります。
しかしながら継続性はなく時間が経つにつれて効果が薄れていってしまいます。

■内的働きかけの例
・ヘルメット着用の重要さをより伝えるべく、セミナーや説明会を開催し、ヘルメットの重要性を国民に植え付ける
・自転車事故の模擬体験を実施し、身をもってヘルメットの大切さを体感してもらう
などといった、人間の内側の部分からヘルメットを着用しなければいけないという意識を植え付けることでヘルメット着用を促す方法です。

この内的働きかけのメリットは、一度人間の内側にヘルメットの重要性を植え付けることができれば長期間にわたりにヘルメットの着用を促すことができ、ヘルメット着用への問題を根本から解決することができます。
しかしながら重要性を植え付けるにはかなりのハードルがあり多くの時間を要す可能性が高いです。

上記の例はあくまで1つの例に過ぎず、様々な具体策があると思います。
外的、内的どちらもそれぞれメリットデメリットがあり、この二つの働きかけをうまく使い分け、最適な政策や方法を編み出していくことが問題解決への近道だと私は考えています。